前脛骨筋ミオパチー
遠位前方コパートメントミオパチー/前脛骨発症を伴う遠位ミオパチーは、Dysferlin遺伝子変異によって引き起こされる常染色体劣性筋ジストロフィーの新たな表現型を示す筋疾患です。原因遺伝子は、第2番染色体「2p13」にあることが報告され、三好型筋ジストロフィーや肢帯型筋ジストロフィーR2(旧
LGMD2B)と同じDysferlinです。このDysferlinの欠損によって筋細胞膜の修復に障害を生じて、筋細胞が壊れやすくなり筋萎縮と筋力低下を起こす病気です。病状は、最初に前脛骨筋に現れますが、筋生検では縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーのような空胞は見られません。病状は、最初に前脛骨筋に現れます。ですが、筋生検では縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーのような空胞は見られません。また、以下の2つの筋疾患は同じ病気だと考えられます。
遠位前方コパートメントミオパチー
「Distal myopathy with anterior tibial onset (DMAT) 」
前脛骨発症を伴う遠位ミオパチー
「Distal anterior compartment myopathy: A dysferlin mutation causing a new
muscular dystrophy phenotype」
「Distal anterior compartment myopathy with early ankle contractures」
遠位前方コパートメントミオパチー/前脛骨発症を伴う遠位ミオパチーは、10~30歳頃に発病して最初に下肢の前脛骨筋に病状が現れます。足の関節が上がらず下垂足のようになり平坦な道での歩行でつまずき転倒し、病状が進むにつれ三好型と同様に体幹から遠い手や足などにも筋肉の萎縮がおこり階段の昇降が難しくなることもあります。発症後10年位で歩行困難とされていますが、個人差があるものと考えられています。現在の所、三好型筋ジストロフィーや肢帯型筋ジストロフィーR2(旧
LGMD2B)と比べて、どの程度の違いが有るのか詳細は解っていませんが、心臓や呼吸器は侵されにくいので生命的予後はよいとされています。
病院での検査では、血液検査をすると肝機能障害と言われてしまうこともありますが、筋肉の細胞の中にある酵素のCK(クレアチキンナーゼ)が血清で通常より高い数値を示します。このCK値によって筋肉を破壊させる病気の性質(筋肉の障害)が分かります。血液検査以外では、「心電図・肺活量・CT検査・MRI検査・筋電図検査・筋生検・骨密度検査
」などが行われます。筋生検では、筋ジストロフィーの変化( 筋線維の壊死、再生、結合組織の増加 )に加えてDysferlin抗体を使って生検筋の免疫染色を行いDysferlinが欠損している(陰性)ことによって診断されます。しかし、遺伝学的検査を受けDysferlin遺伝子変異が同定されなければ確定診断には至りません。
そして、遠位前方コパートメントミオパチー/前脛骨発症を伴う遠位ミオパチーは、三好型筋ジストロフィーや肢帯型筋ジストロフィーR2( LGMD R2/LGMD
2B)と同じDysferlin遺伝子変異によって引き起こされる筋疾患ですが、表現型の違いから病名が異なります。その為、同じ原因遺伝子で発症する筋ジストロフィーであることや共に治療を受けられることをご存じない方が多くいます。その結果、本疾患に関する正確な医学情報の入手が困難となり、社会における本疾患への理解と知識の不足につながっています。このままでは、患者、その家族、医師、研究者、医療機関、製薬会社、政府機関などの間で混乱が生じることが懸念されます。
「近位筋優位」
・肢帯型筋ジストロフィーR2(Limb girdle muscular dystrophy R2 / LGMD2B)
「遠位筋優位」
・三好型筋ジストロフィー(Miyoshi muscular dystrophy / MMD)
・前脛骨発症を伴う遠位ミオパチー(Distal Myopathy with Anterior Tibial Onset / DMAT)
・遠位前方コパートメントミオパチー(Distal anterior compartment myopathy / DACM)
筋ジストロフィー(Dystrophy)とは、筋萎縮と筋力低下をきたす進行性の病気で病理学的に筋細胞の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患です。ミオパチー(Myopathy)とは、広義の意味では筋ジストロフィーも含めた筋疾患(筋原性疾患)すべてを呼んでいますが、狭義のミオパチー(Myopathy)では筋ジストロフィー以外の筋疾患を総称して呼んでいます。現在、肢帯型筋ジストロフィーR2( LGMD R2/LGMD 2B)は筋ジストロフィーに、三好型と遠位前方コパートメントミオパチーは遠位型ミオパチーに分類され指定難病(指定病名)に認定されているので様々な問題を抱えています。
「筋疾患の定義」
筋ジストロフィー :筋細胞の壊死・再生を主病変とするもの(Dystrophy)
ミオパチー(狭義) :筋ジストロフィー以外の筋疾患(Myopathy)
「筋細胞の構造」
筋ジストロフィー :筋細胞に特殊な構造物が無い物(Dystrophy)
* 三好型筋ジストロフィー・肢帯型筋ジストロフィーR2(旧 LGMD2B)
ミオパチー(狭義) :筋細胞に特殊な構造物がある物(Myopathy)
*縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー・眼咽頭遠位型ミオパチー
注訳
【筋疾患(筋原性疾患)】
筋疾患(筋原性疾患)とは、筋肉そのものに原因があり筋肉が萎縮してゆく病気のことをいいます。筋ジストロフィー(Dystrophy)とは、筋萎縮と筋力低下をきたす進行性の病気で病理学的に筋細胞の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患です。ミオパチー(Myopathy)とは、広義の意味では筋ジストロフィーも含めた筋疾患(筋原性疾患)すべてを呼んでいますが、狭義のミオパチー(Myopathy)では筋ジストロフィー以外の筋疾患を総称して呼んでいます。
【前脛骨筋】
前脛骨筋とは脛の前にある筋肉で、主に足の関節を上下させる役目を持っています。
【CK / CPK】
CK / CPK(クレアチンキナーゼ)は、心臓や筋肉の細胞の中にある酵素で正常値約35~210位です。筋疾患などの病気の方で10倍以上の数値が出ますが、健康な方が運動後の検査で示す数値も上昇しますが、2・3日以上経っても10倍以上の数値は出ません。この数値を見る事で分かる事は、筋肉を破壊させる病気の性質(筋肉の障害)が分かります。これは、病気や人により数値の違があります。
【常染色体劣性遺伝】
両方の親由来の遺伝子が共に異常の時のみ発症し、2本のうち1本に異常があっても正常な方が優位に働いて発病しせず(保因者となる)両方とも異常な場合は発病する。つまり、両親が保因者であり、その両親から異常な遺伝子を半分づつ受け継いだ場合を言います。
【常染色体優性遺伝】
片方の親由来の遺伝子だけが異常で発症し、それぞれ2本あるが、そのどちらかに異常があると発病する。この場合、異常遺伝子が子供に伝わる確率は50%となります。また、両親のいずれかは患者と言うことになりますが、病状が軽くて気づかないこともあります。
